アート投資について解説
今回は最近流行りのアートと投資の話をしていきたいと思います。
最近では全国で毎年のように芸術祭が開かれるようになり、NFTアートが数千万円で落札されたとか、そういったアートの流行があります。
書籍でもアート思考なる本も増えてきました。
その中で今回はアートと投資についてフォーカスしてお話していこうと思います。
アートにあまり関心の無い人にもできるだけわかりやすく解説していこうと思うので、よろしかったら読んでみて下さい。
アートは投資になるの?
そもそも、アートは投資になるのでしょうか。
結論から言うと資産価値はあり、価格も推移するのでそれで投資をしている人もいますが、
日本では投資目的のみでアート購入はおすすめできません。
この理由については後程解説していきます。
ここではまずアートにまつわるお金の話をしていきたいと思います;
アートの価格は上がるのか
事実、高値で取引されているアート作品はあるので、価格は上がります。
アート作品の取引には現在はサザビーズやクリスティーズが有名です。
サザビーズは日本にも支店があり、日本語の公式HPもあるのでぜひ見てみてください。
SBIジャパン公式HP
過去のオークションの結果を見ると、絵画が1点100万円を中心に多く取引されていることが分かります。
高値で取引されているアーティストだと、日本人は草間彌生、奈良美智、村上隆。
海外ではバスキアやジェフクーンズ、KAWSなどが有名です。
お金を稼ぐためならアート以外の投資を
アートは投資になる可能性はありますが、お金を稼ぐ目的であればほかのジャンルの投資にしておいた方がよいと思っています。
理由は下記の通りです
・日本では税金が優遇されない
・作品は管理や販売にお金がかかる
・売りたいときにすぐに買い手がつかないことがある
・アートに興味がないと価値判断が難しい
・日本では税金が優遇されない
日本でアート投資をオススメしない一番の理由が税金が厳しいことです。
海外ではアートにまつわる課税が緩いために、投資としてアート購入が積極的に行われていますが、日本では税金の理由で購入が進んでいません。
その理由についてこのブログは細かい税金の話はしませんが、ざっくり概要だけ解説していきます。
アートにまつわる税金で覚えておきたいのは以下の3つ
・所得税が分離課税ではなく、総合課税になる
・事業所が購入した時の減価償却は30万円~100万円まで
・遺産相続
・所得税が分離課税ではなく、総合課税になる
アート作品を投資として購入して売却し、利益を得た場合、それにかかる所得税は総合課税になります。
つまり、ほかの給与所得や事業所得、雑所得と合計して税金がかかります。
所得が大きいと最大で55%もの税金がかかるのでとても厳しいと言えますね。
(一応仮想通貨もこの総合課税に入っています。)
一方で総合課税とは逆に分離課税があります。
これは主に株や土地の譲渡の所得のことで、この税金はほかの所得とは切り離されて税率が計算されます。
最大でも20%の税金までなので、投資としては十分に見込めますね。
最近では日本のアートを活性化させる方法のひとつに、アートを分離課税にする案も少しずつ出てきてはいますが、まだまだ遠い先のようです。
まとめると、日本ではアート投資は総合課税で富裕層にとっては、税率が最大55%と大きいので積極的に購入されないということです。
参考 アート産業活性化に向けたエコシステムの構築
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/210512b.pdf
・事業所が購入した時の減価償却は30万円~100万円まで
アートを会社のオフィスなどに飾る目的で購入した場合、原価償却にすることが可能です。
2020年現在の時点でお話しすると、
年間で30万円以下は消耗品として、30~100万円までは原価償却することが可能になります。
そのため、事業所得がある場合、アートを購入して節税することは可能。
参考 This is gallery
・遺産相続
アートは固定資産なので相続税がかかり、税率は10~55%で金額によって変動します。
アートコレクターが親戚にいる場合は注意が必要で、アートはすぐに買い手がつかない場合が多く、
買い手がつかないアート作品と高額な相続税が残ることになるので気を付けましょう。
対策としては財団を設立したり、事前に相続以外の方法で作品の行く先を考えておく必要があります。
参考 アートストームズ
優遇されている海外のアートの税金事情
日本でのアートと税金についてはざっくりとわかったと思います。
一方で海外の税金はどうなっているのか紹介します
アメリカでは、コレクターが1年以上保有した作品を非課税団体に寄付した場合、その作品の市場価格と同じ額の所得税や法人税が免除される制度が存在します。
これはコレクターにとってはかなり大きな優遇措置です。
たとえば事業で1億円の売上を出して、その半分が所得税として徴収されるとすると、市場価格が5000万円の作品を寄付すれば全額が控除されるわけです。
参考エンリッチ https://www.enrich.jp/money/art_invest/start_collection/25120
驚きですよね。
1年間保有して寄付した場合、その作品の市場価格の分だけ税金が免除されます。
つまり実質手数料なしで投資をしているのと同じことになります。
そのため、アメリカでは高額のアートが買われてる理由がここにあるのかもしれませんね。
日本のアートに対する税制と海外とでは大きく異なることが分かっていただけたかと思います。
・作品は管理や販売にお金がかかる
アートは基本的に現物なので、作品の管理や販売などにお金がかかります。
必ず劣化が起こるので、スペースの確保、湿気対策、温度管理が重要になります。
なおかつ長期間保有することをかんがえると、維持するだけでもかなりコストがかかりますね。
アートコレクターになると、専用の部屋や倉庫を用意して常時空調を付けている人もいます。
また、売買に関しても手数料が発生します
例えばオークションで有名なサザビーズでは以下のようになっています
サザビーズの場合、まず出品手数料は、どこの都市で開催されるオークションであっても、原則として最高で落札価格の10%と決められている。
ただし、落札金額が一定の金額に満たなかった場合はミニマムチャージが発生する。
そのほかに出品者が負担する経費には、保険料、運送料、そしてカタログ掲載料などがある。
ライブドアニュース https://news.livedoor.com/article/detail/9171677/
オークションを利用しない場合でも最低、作品の輸送コストや手間がかかりますね。
・売りたいときにすぐに買い手がつかないことがある
アート作品は売りたいときに必ずしもすぐに売れるわけではありません。
買い手がつかなければ売れずに手元に残るリスクがあります。
アートオークションに出品したとしても、すべて買い手がつくわけではないことを知っておきましょう。
アートは株のようにすぐに売買はできません。
・アートに興味がないと価値判断が難しい
アート(特に現代アート)はその時の流行によって価格が左右されたり、同じ作家でも作品によって価格が大きく異なります。
そのため、常に国内外のアートについて最新の情報をつかんでおく必要があります。
この辺りはかなり複雑で予測が難しいので、よほどアートが好きでないと知ることは難しいです。
また、作品自体への審美眼も鍛えておく必要もあります。
新作の作品はまだ価値が定まっていないので、自分の審美眼が無いとそれがいいものか悪いものなのかが分からなくなってしまします。
そのため、常に企画ギャラリーの展示に足を運んだり、アートフェアやオークションの情報をつかんでおきたいところ。
それでもあえてアートを買う理由
アートは税制で優遇されていなかったり、手間がかかったりするので
投資をするならアートよりも、他の株や不動産の投資で良いのではと思います。
それでもアートを買うのは投資以外の動機がある人ではないでしょうか。
僕自身、アーティストとして自分のアート作品を販売することと、株のインデックス投資もしていますが、お金のためだけにアートの投資をしようとは思いません。
投資家ではなくコレクターになる
たとえ税制で優遇されなくても、手間がかかってもアートを数多く所有しているコレクターは国内にはいます。
その方々は一体どのような理由でアートを保有しているのでしょうか。
ここでは日本のコレクターのアートを所有している理由について何人かまとめました。
・宮津大輔さん
アートにおける天才って、絵がうまいとかそんなつまらないことじゃありません。
考え方や発想がまったく違うわけです。
僕が毎日くだらないことで悩んでるのに、よくこんなことを考えつくな、と思わされてしまいます。もしかしたらこうした考え方が、科学とは違う方向で地球を変えてしまうでは? と思うようなアーティストがいます。
その作品が、僕の手の届く範囲で買えるのだったら、それは悩む必要なんてなくて、即買いますよね。
その作品がモノとしてどうかとか、コレクションとしてどうかとか、将来値上がりするかとか、そんなケチなことはどうでもいいでしょう。
この天才の考えが数十万円で売っているなら、そりゃ買うよね、ということしか考えてないです。
美術手帖 https://bijutsutecho.com/magazine/interview/20471
・柵木頼人さん
ウォーホルの作品を扱っているギャラリーに声をかけてみたら、あまりにも値段が高くて(笑)。
そこで初めて、体験としてお金とアートが結びついたんですね。
それからは買える範囲で作品を探し始め、最終的にウォーホルのオフセットの作品を購入し、事務所に飾りました。
お金のことを色々と考えながら、探し回ってやっと見つけ、それを飾ることができたときは感動しました。
その体験からコレクターのスイッチが入ってしまったわけです。
・前澤友作さん
購入した作品は自分のものというより、受け継がれていくべき人類の財産を一時期だけ所有させてもらっているというイメージです。
だから、とてもそんなことはできないし、そうしたいとも思いません。
素晴らしいアートは世界中の人と共有すべきです。アートにはコミュニケーションを促進し、みんなを笑顔にする力があります。
僕はそんなアートの素晴らしさを多くの人に伝えていきたいのです。
PRESIDENT ONLINE https://president.jp/articles/-/26799
アートを所有する理由はコレクターによって色々ですが、
作家の考えていることに共感したりとか、作品自体にお金ではない価値を感じているという方が多いのではないでしょうか。
そういった意味では、アートの価値はほかの株や不動産などの資産よりも大きいと言えるのかもしれませんね。
以前僕がTwitterで目にしたのは、
「アートはそのものに資産価値もあるし、飾ることもできる。
だから実質買うだけ得する」
というコメントでした。
おすすめの書籍
・教養としてのアート 投資としてのアート
著者は今では国内最大手のオンラインギャラリーを運営しているTAGBOATの代表の徳光健治さんの本です。
作家を育ているギャラリストの立場として、作品を所有するときの心構えや集めるときのポイントについてわかりやすく解説されています。
・巨大化する現代アートビジネス
この本では、あくまで客観的にアートがどのように価格付けされているのか、
なぜ1つの作品が数億円で取引されているのかについて詳しく解説されています。
他ではまず見られない情報までまとまっており、海外の作家の作品もコレクションする人は事実として知っておいた方が良いです。
アートフェアの実態についてもわかります。
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