ブルーピリオド12巻あらすじと深堀り解説をしていきます
今回はブルーピリオド12巻について僕が読んで感じたことをそのまま書いていきます。
僕自身、実際に武蔵野美術大学を出ており、その時の経験から詳しい解説をしていきます。
なお、ネタバレを多く含むのでまだ読んでいない人は必ず買って読んでからこの記事を見てください。
ブルーピリオド12巻の大まかなストーリー
今回の大まかな流れはざっとこのような感じです。
・犬飼教授の課題500枚ドローイング
・ノーマークスに誘われる
・不二桐緒と出会う
・美大に行く意味について考えるようになる
今回の12巻の全体の印象としてはかなり不穏な感じが出ていましたね。
今までは胸が締め付けられるようなシーンが多かったですが、今回は昼ドラのような生々しさがありました。
500枚ドローイング
八虎も2年に進級し、初めての課題が犬飼教授の500枚ドローイングでしたね。
美大ではたまにこういったひたすら量をこなす課題がたまに出てきます。
僕の知り合いでも、武蔵野美術大学のデザイン系でコップのデザインを200通り考えてくるというものや、多摩美術大学の工芸でひたすらロクロで器を100個作る課題があるのを聞きました。
藝大も昔、町の人の似顔絵を100枚描くという課題があったみたいです。
作品制作では考えるよりもただひたすら量をこなすことは結構大切で、
課題で作品のコンセプトに悩みすぎて作品がなかなか制作できず、ぎりぎりになって中途半端な完成度の作品が出来上がることはよくあります。
1か月くらいの期間の課題の時に、2週間近く誰も学校に来ず、1週間前ぐらいになって慌てて学校に制作に来るような人はたくさんいました。
美大だと作品のコンセプトが重要視さていますが、それを大切にしすぎてもよくない一面もあります。
制作をしながら徐々に自分の作品の方向性や好きなものをつかんでいくこともあるので、今回の500枚ドローイングは有意義だったと思います。
一部の学生からは不満が出ていましたが、犬飼教授の考えもしっかりしているので、課題としてはとても良かったと思います。
犬飼教授の方向性として、基礎力を大切にしている人だなと感じました。(言葉は多少とげがありますが笑)
美大と反権威主義集団ノーマークス
今回はノーマークスという美術団体が出てきましたね。
美術の権威(学歴や受賞歴など)にとらわれないことを理念に掲げています。
このノーマークスが藝大と対比されて八虎の心を揺さぶっていくのがこの12巻のポイントでした。
藝大ではあまり教授も指導せず、指導したかと思えば突き放すような言葉をかけてきたりして、八虎は落ち込むようなことが何度もありました。
500枚ドローイングで自分が進歩していないと言われてしまったところにノーマークスが入り込みます。
ノーマークスはカリスマ的な主催者の不二さんを中心としたで、美術系のたまり場としての場所。
美大ではいわれないような優しい言葉や、自分を受け入れてくれるような言葉を聞き、八虎が傾倒していきます。
この徐々に心を奪われていく感じはかなりダークな感じで、腐っていくような感じが僕はしました。
ノーマークスの人はみんないい人ばかりではありますが、逆に自分が成長しなくなる危うさを秘めていますね。
美大生は慣れあうと沼にはまる
美大生に限らないのですが、慣れあうと傷の舐めあいの感じでどんどん沼にはまっていってしまいますよね。
藝大での教授との関係は緊張感があり、友人もライバルという感じでしたが、
ノーマークスでは不二さんがまるで母親のような関係で、団体自体が家族のような感じになっていました。
この状態だと、自分の実力は全くつかないのに自己啓発的に気持ちが高揚していくので、勘違いして美大をやめる人が出てきます。
事実、ノーマークスにいる間は制作をせず、口だけの批評ばかりしていたのがもう駄目ですね。(笑)
これは美大に限った話ではなく、どんな大学でも起こりうるとは思います。
不二さん自身も悪い人ではないのですが、人として魅力的な反面、自覚のない人たらしな感じが印象的でしたね。
制作の答えは自分の中に
藝大とノーマークスが結構わかりやすく対比されて描かれており、主な対比はこのようになっています。
藝大
・権威的
・ある意味でとても現実的な場所
・教授とは緊張感のある関係
・友人とはライバル同士
・アドバイスを明確に言ってくれない。自分で考えて答えを見つける
ノーマークス
・非権威主義
・まるで夢のような場所
・不二さんとは教祖と信者のような関係
・友人とはどちらかというと家族的
・わかりやすく教えてくれる
全体的に、藝大は八虎にとって厳しい場所であるのに対し、ノーマークスは自分を受け入れてくれる優しい場所の感じですね。
完全にどちらが良くてどちらが悪いというわけではありませんが、ノーマークスに依存してしまうと自分の主体性がなくなってしまうのが危ういですね。
自分にとって居心地がいい場所であるのに対し、自分の答えをゆだねてしまって、考える力がなくなっていきます。
藝大はアドバイスもかなり抽象的だったり、遠回しに言われたりで、悩んでしまうことや辛いことも多いですが、自分なりの答えを見つけて成長していく姿がありました。
今後、八虎は藝大とノーマークスのどっちを選ぶのかが気になりますね。
世田介君が八虎を引き戻すのか、それともそのまま沼にはまっていくのか。
美大と権威主義について
美大はあくまでも大学という教育機関です。
そのため、学問としての教養を身に着け、主体的に学んでいくことが求められます。
犬飼教授が展示場で作家に対し、「君、どこの大学をでてるんですか?」と言ったのも、基礎的な教養が作品から感じられないということを遠回しに言っているのですね。
八虎が美大は何も教えてくれないと考えていましたが、大学は義務教育の小中高の学校とは違って自分で学んでいかなくてはいけません。
そのため、教えてくれないのではなく、自分で学ぶための力が足りなかったのですね。
もし自分から主体的に学んでいれば、500枚ドローイングでも1年生の時と比べて変化があったはず。
ブルーピリオドは大学編から毎回テーマが巻ごとに変わっていくのが面白いですね。
前回は子どもの美術教育とは?でしたが、今回は美大は必要?でした。
続きがめちゃくちゃ気になります。
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