絵を描く人の最初の関門。それがパース
今回は絵の重要な要素の一つであるパースを解説していきます。
おそらく初めて絵を描く人がぶち当たる最初の壁で、これがきっかけで絵が嫌いになる人も少なくないです。
とはいえ、パースを習得するだけで普通の人より遥かに絵が上手くなるのでぜひ学んでおきたい分野です。
そんなパースの種類や書き方をこの記事で解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
パースとは?
パースとは、ものの形を立体に起こした時にできる形のこと。
また、絵画で言われるパースは遠近法のことを指す場合もあり、これは遠くにあるものほど消失点に近づく遠近です。
例えば、高層ビルを真下から見上げた時に、高層になるにつれて細く見えますよね。
絵を描いていて、パースが狂ってるとよく言われますが、これはその遠近がチグハグな場合を指します。
パースは重要な絵の要素の一つで、工業製品を描く時には必ず必要になります。
立方体のものやチェック模様の布、缶ジュースの楕円など、パースが必要になる場面はかなり多いです。
美大受験においてはこのパースの正確さはデザイン科や工芸科で特に厳しく見られます。
苦手な人も多いと思いますが、これを押さえられれば絵のクオリティは格段に上がります。
パースが苦手な人って本当に苦手んなんですよね。
絵を描く上では避けられない要素なので、クオリティの高い絵を描くためにも頑張って習得していきましょう、、!
正確にパースが取れれば絵に臨場感が生まれる
正確にパースがとられた絵は臨場感があります。
これはパースはものをみる視点によって変わるため。
例えば高層ビルを見た時は、真下から見上げた時は高層階がかなり細くみえるきついパースがついていますが、
遠くに離れてビルを見るとそのパースは緩やかになっていきます。
パースが正確な作品はモチーフをどの視点から見たのかがわかるので、絵を描いた人の視点がより鑑賞者とリンクして臨場感が生まれます。
パースの種類
パースは透視図法と呼ばれる作図法を用いて描かれます。
透視図法もいくつか種類があるのでここで簡単に解説していきます。
透視図法の種類
・1点透視図法
・2点透視図法
・3点透視図法
1点透視のパース
1点透視のパースは消失点が一つのパースです。
絵画の世界ではたまに見られる描き方で、例えば葛飾北斎の浮世絵で見られます。
シンメトリーの絵で使われることが多く、画面の奥行きをかなり感じさせ、印象的な感じの絵になりやすいです。
1点透視がつかわれている絵で代表的なのが葛飾北斎の浮世絵です。
富嶽三六景では一点透視の消失点に富士山が描かれていることが多く、富士山を印象付けるのにかなり効果的。
1点透視で描かれた絵は構図のインパクトが強いですね。
2点透視のパース
2点透視の絵はもっとも一般的で多用されます。
静物画を描く時はほぼ2点透視を使って描きます。
消失点が2つあり、そこに向かってパースが付きます。
比較的自然なパースがつくので、多用されますね。
3点透視のパース
3点透視は2点透視に高さの減衰の概念が加わったものです。
これは大きなものを描くときに使われます。
例えば、ビルを真下から見上げると高層階ほど細く見えますよね。
それが3点透視です。
卓上のものを描く場合でも厳密には3点透視になっています。
ですが、かなりわずかな変化しかないので基本的には無視され、2点透視になります。
なので3点透視は風景画でよく使われますね。
円柱のパース
ここまでで立方体のパースを解説しましたが、ほかの図形にも簡単に触れておきます。
例えば、円柱はこのようなぱーすになります。
円柱を描くときは立方体を最初に描いてから、そこに内接するように描くと結構簡単に書くことができます。
ほかの複雑な形状を描くときも、最初に直方体や立方体を描いてから、そこに内接させると理解しやすくなります。
補足 目線の位置で見える面積が変わる
補足として、目の位置で見える面積が変わることについても触れておきます。
例えば、机の上に丸を書いたときに、机ぎりぎりの目線で見ればかなり細い楕円に見え、逆に高いところから見下ろせばかなり正円に近くなりますよね。
この変化もパースが狂っているかどうかのポイントになるので、よく確認しましょう。
静物画を描くときにこれが狂うと、机からモチーフがずり落ちそうに見えたりして、机が平らな平面に見えなくなります。
静物画におけるパースの例
静物画を描く場合、複数のモチーフが組み合わされるため、絵全体でパースの狂いがないように取っていかなくてはいけません。
まずパースの目安となる大きめのモチーフを描いた後に、それに合わせて他のモチーフのパースも合わせてあげます。
台座から瓶の底、箱類の直方体までパースが必要なモチーフは多いです。
毎回作図に丁寧に補助線を引いたりはできないので、直感的にパースをとれるようになりましょう。
パースを取る練習方法
パースを取るのが苦手な人も多いと思うので、ここで練習法も解説します。
・パース図を作図してみる
上記で紹介した3種類の透視図をまず定規で作図してみましょう。
そうするとどのぐらいのパースが起きるのかが理解しやすくなります。
この時にポイントなのはなるべく大きな紙を使うこと。
2点透視の図などで、消失点の間をなるべく広くとり、余裕をもってモチーフが入るように描きましょう。
あまり大きくモチーフを入れてしまうと、不自然なパースになるので要注意です。
・単体の基礎形体を描く(作図なしでフリーハンドで)
パースを上達させるために、まずは立方体、円柱を正確に描くことから始めます。
正確な立方体を描くことは簡単そうに見えますが、実はかなり難しいです。
少しでも形が歪んで見えたり、直方体に見えたりしたらダメです。
初めて描く立方体は絶対と言っていいほどパースは狂ってしまいます。
1個で3~6時間近くかけてもいいので、まずは正確な立方体、円柱を描けるようになりましょう。
パースの狂いに気づくには?
パースの狂いは自分では気づきにくいです。
絵は自分で描いていると、ずっと絵を見てるので目が慣れてしまい、形の狂いに気が付きにくくなるんです。
なのでパースを修正するヒントをいくつか紹介します。
・絵を逆さにしてみる
・一日経った後に見直す
・他の人に見てもらう
・参考になる正確なパースの絵ととなりに並べて比較する
自分は今描いている絵を見慣れすぎてしまっているので、その慣れを断ち切ってあげると間違いに気が付きやすくなります。
おすすめの本
最後にパースがもっとうまく描けるようになる本を紹介します。
パースの本はいくつかありますが、この本が最も実践的で実際の絵の生かしやすいのでおすすめ。
ほかの本は漫画用だったり建築用だったりするので絵画用としてはいまいちなんですよね。
この本1冊あれば十分なので、若干値段ははりますがおすすめできます。
補足 楕円を描くのは難しい
楕円を描くのは結構難しいです。
フリーハンドで描くと大抵の場合、小判型(4角形に近いかたち)や、菱形に近い形になってしまいます。
最初から正確な楕円をかける人はいないので、訓練して楕円をかけるようになりましょう。
方法としては、パソコンで楕円を描いて印刷し、それをひたすらなぞるのがもっとも手軽だと思います。
楕円のカーブの具合を体に染み込ませて覚えてしまいましょう。
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